2007.10.8〜9


 第日目(10/9 TUE) 

昨日からの雨は殆んど上がっている。ホテルで朝食をとり、7:40バスで早めの出発。今日は立山黒部アルペンルートだ。

  

 黒部ICまで昨日来た道を戻り、そこから北陸自動車道に入り、立山ICで下り、県道6号線を富山地方鉄道に沿って立山駅まで走る。我々一行はここでバスを降り、ケーブルカー、高原バス、トロリーバスやロープウェイを乗り継いで長野県の扇沢までアルペンルートを行くのである。バスはわれらの荷物を乗せて、扇沢まで回送してくれるのである。

       
                 立山駅                      立山ケーブルカーの立山駅ホーム

 立山駅はアルペンルートの富山県側の玄関口である。立山発9:10の立山ケーブルカーで美女平へと向かう。立山ケーブルカーは美女平と麓の立山駅まで、標高差500m、最大斜度29度の急斜面を2台の車両がつるべ式に昇降するケーブルカーで、立山〜美女平間1.7kmを7分で運行する。

       
     立山ケーブルカー 客車に連結している荷物車両         立山ケーブルカー(美女平駅にて)

 美女平一帯は「森林浴の森・日本100選」に選ばれた森。立山杉の巨木やブナ、トチなどの原生林が広がっている。そして、駅舎の前にはタテヤマスギの大木「美女杉」が立っていて、その根元には石仏が安置されている。立山の女人禁制の掟を破って立山に向かったお姫様が、ここで動けなくなり、杉木に変わってしまったとも伝えられている。

       
        美女杉(駅舎内より撮影のため裏側)               称名滝(左)とハンノキ滝(右)

 美女平からは立山高原パークライン立山有料道路(いずれも一般車両通行不可)を走る立山高原バスで、室堂へ向かう。高原バスは美女平〜室堂間、標高差1500mの高原23kmを50分で結んでいる。途中の称名滝展望台では停まってくれて、車窓からではあるが日本一の落差350mの称名滝を見ることができた。また、その隣には雪解けの増水時に現れる落差500mのハンノキ滝まで見ることができた。

           
                         立山パークラインにて 美女平〜弥陀ヶ原

 バスはどんどん高度を上げて行き、30分ほどで標高1930mの弥陀ヶ原に到着。弥陀ヶ原は標高2000m前後にかけて広がる溶岩台地の上に発達した高層湿原で、高山植物の宝庫といわれ、大小3000個あまりもの餓鬼田と呼ばれる池塘があるのも特徴である。ここまで登ってくると紅葉が見ごろで、車窓の両側には素晴らしい景色が展開されている。

       
         立山有料道路を走る立山高原バス                  弥陀ヶ原付近

 130mの落差を、ソーメンのように白くて細い水の筋が岩肌を流れ落ちているソーメン滝を左手に見て、標高2300mの天狗平を過ぎると、例年春のアルペンルート開通時には、積雪の多い年には20mにも達するという雪の壁ができることで知られる雪の大谷を通り過ぎると、室堂ターミナルに到着である。室堂平散策の起点となる室堂ターミナルは、アルペンルートの最高地点標高2450mにあり、ターミナルに直結して、日本最高所のホテルである「ホテル立山」がある。

       
                ソーメン滝                       室堂ターミナル・ホテル立山

 立山三山(別山・雄山・浄土山)に三方を囲まれた室堂平は、約万5年前の火山活動によってできた溶岩台地である。みくりが池をはじめとする大小の火口湖や、荒涼として噴煙上がる地獄谷、立山信仰の玉殿岩屋などがあり、見どころが多い。

   
               室堂平  右から浄土山、立山(雄山・大汝山・富士ノ折立)、真砂岳、別山

 室堂ターミナルを出ると、目の前に室堂平が広がり、間近に立山を仰ぐことができる。立山は、雄山・大汝山・富士ノ折立という三つの山の総称である。

            
                         立山  右より雄山、大汝山、富士ノ折立

 ターミナル前広場にある立山玉殿の湧水の前を通って遊歩道を進むと、コバルトブルーの水を満々と湛えるみくりが池が見えてくる。みくりが池は、立山の火山活動で生れた火口跡に水がたまった湖で、周囲631m、深さ16mと室堂平では最も大きい。

   
                    みくりが池  正面の山は別山、池奥左は「みくりが池温泉」

 対岸の、日本最高所の温泉としても知られる地獄谷温泉を引湯した「みくりが池温泉」を経て、みくりが池を一周しようと歩き始めたとたんに冷たい雨が降ってきたので戻ることにする。雨はすぐに止んだので、室堂山荘の方に行ってみる。室堂平一帯は標高が高い(2450m)ので、あまり高い木はなく、チングルマなどの草紅葉が見られ、今が盛りだ。

       
               草紅葉と大日岳                        室堂平の紅葉

 国の特別天然記念物ライチョウは、全国の推定生息数約3000羽のうち、1割以上が立山に生息するとみられており、みくりが池の周辺でも見ることができるとのことであるが、今回は見つけることができなかった。

 10分ほどで立山山荘に着く。ここには、日本最古の山小屋として国の重要文化財に指定されている立山室堂が保存されている。建物は2棟に分かれ、北室は1726年(享保11年)、南室は1771年(明和8年)に再建されたものを、1992〜94年の解体調査後に復元したもの。最初の建物ができたのは14世紀末以前と考えられている。屋根は切妻造で、柱はタテヤマスギの太い角材を等間隔に並べた堅牢な構造である。内部には解体調査で出土した陶器等の貴重な遺物が展示されている。

                     
                            国指定重要文化財 立山室堂

 室堂ターミナルに戻り、ホテル立山内のレストランで、昼食を摂った後、立山トンネルトロリーバスで大観峰へ向かう。立山トンネルトロリーバスは、全区間立山直下の立山トンネルの中を通り、室堂駅(2450m)〜大観峰(2316m)間3.7kmを10分で結んでいる。1971年(昭和46年)ディーゼルバスで営業開始、1996年(平成8年)にトロリーバス化されたのである。
 大観峰に着き、駅舎屋上の展望台に上がると、目の前に後立山連峰と黒部湖、そして眼下には見事に紅葉したタンボ平が広がる大パノラマが展開されている。 言葉もなく大感激!! また、展望台裏の立山の岩壁にも、きれいな紅葉が見られる。

   
      後立山連峰(右より針ノ木岳、スバリ岳、赤沢岳、鳴沢岳、岩小屋沢岳、鹿島槍ヶ岳、五竜岳)と黒部湖      

       
                 タンボ平                           タンボ平の紅葉

 大観峰からはロープウェイで黒部平まで下りるのだが、この立山ロープウェイは、立山の東壁を背に、大観峰(2316m)と黒部平(1828)間、延長1700m、標高差 500mを7分で結んでおり、途中に支柱がない、日本最長のワンスパーン・ロープウェイで、黒部湖や後立山連峰の眺めはまさに「動く展望台」である。

       
        紅葉の絨毯の上を行く立山ロープウェイ               雲の上を行くゴンドラ

 黒部平駅の前には、テラスのように広がる小平地の黒部平庭園があり、見事に紅葉したナナカマドと、その向こうに見える針ノ木岳の姿が美しい。

       
          針ノ木岳(黒部平庭園より望む)           綺麗に紅葉したナナカマド(黒部平庭園にて)

 黒部平庭園で小休止した後、今度はケーブルカーで黒部湖まで下りるのである。黒部平(1828m)〜黒部湖(1455m)間 0.8kmを5分で結んでいる黒部ケーブルカーは、日本で唯一、全線地下式になっているケーブルカーである。

       
         黒部ケーブルカー(黒部平駅にて)              黒部ケーブルカー(黒部湖駅にて)

  黒部湖駅から外に出ると、そこは黒部ダムの堰堤西端である。黒部ダムは、黒部川の本流を堰き止めて作られたダムで、通称「くろよんダム」と呼ばれている。7年の歳月と総工費513億円をかけて、1963年(昭和38年)に完成。高さ186m、堤長492mの美しい弧を描くアーチ式ドーム越流型ダムで、2億立方メートルの貯水量は日本有数の規模を誇っている。

 堰堤の右手には、北アルプスの雪解け水を集め、ブナなどの原生林に囲まれてエメラルドグリーンの湖水を湛える黒部湖が広がっている。西岸からは湖を30分で一周する黒部湖遊覧船ガルベが運行している。湖面標高は1448mあり、湖を渡る風は夏でも冷たい。

       
                 黒部湖                       黒部湖を遊覧する遊覧船ガルベ

 左手には黒部峡谷を見おろすことができる。黒部川はダムからは下廊下(しものろうか)と呼ばれる屏風を立てたように両岸から岩壁が迫る秘境を流れ、トロッコ電車の終点欅平、宇奈月温泉を経て日本海に注いでいるのである。

 492mの堰堤を歩いて渡ると、東端の一角には殉職者慰霊碑がある。黒部川第4発電所建設工事で犠牲になった人たちを悼むこの慰霊碑には、殉職者171人の名前がプレートに刻み込まれており、今でも絶えることなく花が手向けられている。

       
           黒部峡谷(黒部ダム堰堤より)                 黒部ダム 殉職者慰霊碑

 黒部ダムでは、例年6月26日〜10月15日には、毎秒10〜15トンの豪快な観光放水が行われていて、堰堤東端に建つ黒部ダムレストハウスから階段を下りていったところにある、新展望広場からは間近にこれを見ることができる。

 堰堤東端からトンネルを5分ほど行くと、関電トロリーバスの黒部ダム駅で、そこからトンネル内の220段の階段を上がった、標高1508mところにダム展望台がある。この展望台からは黒部ダムが眼下に広がって見えるというのであるが、新展望広場へ行きへ豪快な放水を見てきたし、また階段を上り下りするのも大変なので、展望台へ行くのは止めにする。

       
               黒部ダム展望台                     観光放水中の黒部ダム

 いよいよアルペンルートの最後の行程だ。富山県立山町の黒部ダム駅から後立山連峰赤沢岳の直下を貫き、長野県大町市の扇沢駅まで6.1kmの間を16分で結んでいる関電トンネルトロリーバスで、扇沢へ行く。トロリーバスは現在、関電トンネルと立山トンネルでしか運行されていない日本唯一の存在とのこと。

                     
                              関電トンネルトロリーバス

 15:50 扇沢駅に着くと、立山駅から我々の荷物を積んで回送してくれたバスが待っていてくれる。これに乗り、一路長野駅へと向かう。17:15 上信越道長野IC近くのおぎの屋に到着、ここで最後のお土産などを買い、18時00分、長野駅に到着。夕飯のお弁当を買い、18:34発の「あさま546号」で帰路に着く。

 今回の旅は、初日の黒部峡谷は紅葉も殆んどしていなく、しかも雨に降られてと、今穂と津であったが、二日目の立山黒部アルペンルートは、天候も回復し、紅葉もちょうど見頃で素晴らしい景色を楽しむことができた。


                                                            おわり



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